左後輪の車輪脱落事故はなぜ多いのか

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行政書士の阪本です。

国土交通省は、平成30年10月19日に平成29年度のホイール・ボルト折損等による大型車の車輪脱落事故発生件数は67件(うち人身事故2件)で、前年度に比べ11件増加し、近年、同事故の発生件数が増加傾向にあると発表しました。

大型車の車輪脱落事故が増加!特に左後輪に注意!

~ 平成29年度大型車の車輪脱落事故発生状況を受けて ~

平成29年度のホイール・ボルト折損等による大型車の車輪脱落事故発生件数は67件(うち人身事故2件)で、前年度に比べ11件増加し、近年、同事故の発生件数は増加傾向にあります。

これから冬用タイヤの交換作業を迎えることから、タイヤ交換時の適正な作業の実施、一定距離走行後の増し締めなど、確実なチェックが重要です。(平成30年10月19日 国土交通省自動車交通局プレスリリース)

平成29年度の大型車(車両総重量8トン以上のトラック又は乗車定員30人以上のバス)のホイール・ボルト折損等による車輪脱落事故の主な傾向には下記の通りです。

  • 大型車の車輪脱落事故は、冬期(11月~3月)に集中(全67件中56件(84%))。
  • 積雪地域での発生が多く、北海道での発生が前年度より8件増加し13件(前年度の2.6倍)。
  • 車輪脱着作業後1ヶ月以内に発生した脱落事故が約半数(55%)を占める。
  • 脱輪の主な原因のうちホイール・ボルト又はナットの締付不良等の「作業ミス」が91%と大半を占める。
  • 脱輪の直前に行ったタイヤの脱着作業が「タイヤ交換」である44件について、その作業の実施月を見ると、11月にタイヤを交換した車両が21件(48%)を占める。
  • 車輪脱落位置の大半(56件(83%))が左後輪

左輪タイヤの脱落割合が高い原因は?

左輪タイヤが多く脱落する原因については、以下の可能性が考えられます。

  • 右折時は、比較的高い速度のまま旋回するため、遠心力により積み荷の荷重が左輪に大きく働く。
  • 左折時は、低速度ではあるが、左後輪がほとんど回転しない状態で旋回するため、回転方向に対して垂直にタイヤがよじれるように力が働く。
  • 道路は中心部が高く作られている場合が多いことから、車両が左(路肩側)に傾き、左輪により大きな荷重がかかる。
  • ホイール締め付け方式がISO方式の場合はナットが緩む方向が左回りであり、これは左輪の転がる方向と同一方向のためナットが緩みやすい。

反対に、前輪タイヤの脱落が少ないのは、前輪は、ホイール・ボルトゆるみ等の異常が発生した場合には、ハンドルの振動等により運転手が気付きやすいという原因によるものと考えられます。

車輪脱落事故発生状況

(上記は国土交通省の公開している資料より引用)

脱輪対策

トラックは、構造上、車体重量が重たい、積荷によっては重心が高い場合もあり、カーブでは遠心力が強く働くこととなり、横転などの危険性が高いことと共に、左側に大きな荷重がかかります。

また道路の路面には、雨水などを側溝に導くために勾配が付けてあります。

横断勾配の標準値は1.5%~2%とされていて、直線区間や曲線半径が大きい場合は、道路中心をトップとして左右に標準値の横断勾配が施されています。

勾配は普段運転していて感じるものではありませんが、それは勾配のある道路に慣れ自然と左右のブレを修正しているのであって、勾配により車両が左側に傾き、左車輪に大きな負担をかけているのは事実です。

以上のことから、冬用タイヤの交換を迎えるこの時期には、脱落の多い左後軸のタイヤについては重点的に点検を実施をお願いいたします。

車輪脱輪事故を防止する点検実施の際のポイントは次の5つになります。

  1. 錆びたナットは使用せずに清掃と交換の実施
  2. ナットとワッシャーの隙間への注油
  3. ホイールに適合したボルト及びナットの使用
  4. 規定トルクでの確実な締付とタイヤ交換後、50~100km走行後の増締めの実施
  5. 日常(運行前)点検における確認

日常点検では、点検ハンマーを使う他に、目視でも確認できるようにホイールナットマーカー(インジケーター)の活用もご検討ください。ホイールナットマーカー(インジケーター)は樹脂製のため、使用期間は1年間です。昨シーズン使用したホイールナットマーカー(インジケーター)の再使用は止めましょう。

終わりに

車輪脱落事故は、車輪脱着作業後1か月以内に発生しています。安全確保のための日頃からの点検・整備の実施を行い、安全な運行をお願い致します。

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