行政書士の阪本です。
観光バスがトランクルームに積載していたスーツケースを高速道路上に落下させる事案が生じました。
https://mainichi.jp/articles/20180119/k00/00m/040/149000c
並走していた車両のドラレコがその一部始終を記録していたため、カーブにさしかかった観光バスのトランクルームよりスーツケースが落下する瞬間の映像をご覧になられた方も多かったのではないでしょうか。
幸いけが人は出ませんでしたが、タイミングが悪いと重大事故になることは容易に想像できます。
落下物は落とし主の責任です。
平成28年度の高速道路と直轄国道上の落下物の件数は76万件となっています。落下物が原因で第三者に損害が生じた場合、民法上の損害賠償責任が生じます。
また、道路法第43条及び道路交通法第75条の10違反になります。
道路法第43条(道路に関する禁止行為)
何人も道路に関し、左に掲げる行為をしてはならない。
1 みだりに道路を損傷し、又は汚損すること。
2 みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼ虞のある行為をすること。道路交通法第75条の10(自動車運転者の遵守事項)
自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量の不足のため当該自動車を運転することができなくなること又は積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない。
落下物を防ぐためには
貨物自動車の場合
- 積荷の固定を確実に実施しましょう。そのためには、固定に使用するワイヤーやロープ等の用具が損傷していないかの確認や、ワイヤーやロープで固定する場合は、固定箇所を多めにとるようにします。砂利などの運送を行う場合はシートで覆いましょう。
- 強風時は、念入りにワイヤー、ロープ、シート等をかけましょう。
- 出発前に再度、積荷の積載状況や車両の点検を実施しましょう。
- 長距離移動するときは、ワイヤーの緩みがないかなど、休憩場所での再確認を実施しましょう。
- 一般貨物自動車運送事業者さんは、運転者教育の中で、貨物の正しい積載方法についての指導を運転者に対して実施しなければなりません。
- スピードを控えて制限速度を守りましょう。
観光バスの場合
- 運転手さんがトランクルームのドアの開け閉めを行いましょう。
- 添乗員さんや乗客の方がトランクルームの開け閉めできないように施錠を行いましょう。
- 出発前に再度、トランクルームのドアが確実にしまっているかなど、車両の点検を実施しましょう。
- 長距離移動するときは、休憩場所を出発する際に、確認をしてから運行を開始しましょう。
- 一般貸切旅客自動車運送事業者さんは、運転者教育の中で、「事業用自動車の構造上の特性」や「乗車中の旅客の安全を確保するために留意すべき事項」として、トランクルームへの荷物の積載方法についての研修を実施しましょう。
- スピードを控えて制限速度を守りましょう。
名古屋市内で発生した観光バスがスーツケースを高速道路上に散乱させた事案では、トランクルームの半ドアが原因だったと言われております。
直前の休憩箇所において、添乗員さんがトランクルームを開けた際、確実にドアが閉めておらず、運転者さんもそのことを気づかないまま運行を開始してしまったようです。
また、並走車両のドラレコの映像を見る限りでは、急カーブの箇所にもかかわらず、速度が出ていたのではと推測されます。
国土交通省では、法令違反が確認された場合、この観光バスを運行していた一般貸切旅客自動車運送事業者に対して監査を実施するとのことです。
監査の結果、法令違反の事実が確認されると車両停止や事業停止などの行政処分が課されることになります。
落下物は重大事故のもとです。積荷が落下しない対策を確実に行いましょう。
※道路上で落下物を発見したら、通話無料の♯9910(道路緊急ダイヤル)へ報告を行いましょう。
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トラバス代表理事。行政書士開業後、個人事務所時代から一貫して、運輸と観光分野に関する専門家として、数多くのトラック運送会社、貸切バス事業者、倉庫業者の許認可法務に関与してきた経験を持つ。
現在も行政書士法人シグマの代表行政書士として、行政書士法人を経営しながら、運輸業と観光法務の実務家として活動中。
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)賛助会員(認定アドバイザー)