健康起因事故に対する行政処分が新設されました。

行政書士の阪本です。

令和3年6月1日より、自動車運送事業者(トラック・バス・タクシー)が運転者の健康状態の把握等を適切に行わずに重大事故を引き起こした悪質な違反に対して、車両停止の行政処分が新設されました。

新設された行政処分の内容

違反行為

健康診断未受診による健康起因事故が発生したもの

基準日車(初違反)

40日車

基準日車(再違反)

80日車

健康起因事故とは、運転者が脳疾患・心臓疾患・意識喪失を発症し、その運転者以外の負傷者が生じた事故等を指します。

新設された違反行為は、自動車運送事業者が、運転者の事故発生日から過去1年以内に法定の健康診断を受診させずに乗務させた場合に適用されます。

さらに、健康診断を受診していても、その健康診断受診結果において、脳疾患・心臓疾患・意識喪失に関する疾病を疑い、要再検査や要精密検査、要治療の所見があるにもかかわらず、再検査を受診させずに乗務させていた場合のいずれかに該当した場合にも適用されます。

つまり法定の健康診断を受診させることはもちろんですが、業務多忙や本人が通院を拒否するなどして再検査を受診させずに放置した結果、健康起因事故を生じさせたことに対しても違反行為として行政処分の対象となります。

運転者が受診する健康診断は原則は年1回ですが、深夜業(22時~5時までの間の業務)に従事する運転者には、6か月ごとに1回、つまり年2回の健康診断を受診させなければなりません。

勤務時間が22時~5時となる運転者が年1回だけの健康診断を受診している場合、法定の健康診断を受診しているとは言えません。

万が一この運転者が健康起因事故を引きおこしてしまった場合は、行政処分を受けることになってしまいます。

健康診断受診のルールについては、当社団理事の志田社労士が執筆した記事をご参照ください。

特定業務従事者の健康診断
『トラバス』のブログにお越しいただきましてありがとうございます。 社会保険労務士の志田です。 皆さんの会社では、定期的に...

健康起因事故に対する行政処分が新設された背景

自動車運送事業(トラック・バス・タクシー)の運転者の疾病により事業用自動車の運転を継続できなくなった事案として、自動車事故報告規則に基づく報告される件数は増加傾向にあります。

自動車事故報告規則に基づく事故として報告される事案の中では、運行の中断等、交通事故に至らなかった事案が大半を占めているものの、運転中に操作不能となった事案が約2割もあります。

道路運送業法及び貨物自動車運送事業法では、

自動車運送事業者は、事業自動車の運転者が、疾病により安全な運転ができないおそれがある状態で事業用自動車を運転することを防止するために必要な医学的知見に基づく措置を講じなければならない

と規定されてはいます。

しかしながら、国土交通省は、必ずしも遵守されていない事例があるものと考えているため、健康起因事故に対する行政処分が新設され、令和3年6月1日より施行されました。

今回の行政処分の新設により、健康診断未受診のリスクは高くなりました。

多くの自動車運送事業者様は、法定の健康診断を運転者に受診して頂いているかと思いますが、新入社員の方の健康診断受診漏れはありませんでしょうか。

また、再検査になった運転者さんがいるのに、再検査の予約を運転者任せにして放置されていませんでしょうか。

この機会に確認されることを強くお勧めします。

blog_banner_mail blog_banner