巡回指導は、国交省の監査と違って突然、実施されるものではありません。
概ね、適正化事業指導員が巡回する日の2~3週間前までに、巡回指導の対象となる営業所宛てに「巡回指導通知」が郵送で届きます。
多くの運送事業者様は、この巡回指導通知が届くと動揺されて
「先生、遂に監査が来ます・・・」
とご連絡を頂くのですが、よくよく伺うと監査と巡回指導を勘違いされていることが多いです。
監査と巡回指導の違い
監査は、国交省が実施するものであり、多くは事前に通知は行われなく、突然、営業所へ複数名の監査官がやってきて実施されます。
一方、巡回指導は、適正化事業実施機関(各都道道府県に設置されているトラック協会)が国交省から指定されて実施をしているものです。
ここでは、国交省の委託を受けてトラック協会が巡回指導業務を実施していると理解すればよいでしょう。
運送事業者の法令遵守体制を確認するという目的は一緒ですが、監査と巡回指導は別物です。監査の結果、法令違反がある場合は行政処分を受けることになりますが、巡回指導では、改善事項があれば、巡回指導員より、改善報告書の提出を求められることになります。
改善報告において未改善の項目がある場合は、適正化事業実施機関から国交省に通報されます。この通報が国交省が実施する監査の端緒になります。
従って、「巡回指導だから大丈夫」と適当に対応するのは危険です。
巡回指導の通知は営業所宛てに封書が郵送で届きます。この通知書は、営業所を管轄する運輸支局長名で届きますので、運送事業者様が巡回指導と監査を混同されるのはやむ得ないと思います。
通知書が届いた時点で放置される運送事業者様が以外と多いのですが、巡回指導は運送事業を継続するために重要なイベントですので、すぐに開封しましょう。
巡回指導通知で先に確認すべき2つの項目
巡回指導通知が届いたら、まず、次の2つの項目を確認してください。
1.巡回指導が実施される日程
2.巡回指導時に巡回指導員が確認する書類の期間
事業者様から巡回指導対応のご相談を頂いたら、私はまずこの2つを伺わせて頂きます。
一つずつ解説をしていきます。
1.巡回指導が実施される日程
巡回指導通知には、巡回指導が実施される日付と開始時間が記載されております。所要時間は開始時間から最大2時間を予定しておきましょう。
巡回指導当日は、営業所の代表者(営業所長)又は運行管理者の方が対応する必要があります。私の関与先の運送事業者様の中には、社長や運送業担当役員が同席されることもありました。
事業者側の同席が求められるのは、巡回指導員が書類を確認中に内容について説明を求められることがあるため、それに対応する必要があるからです。事務員さんに丸投げはダメです。
巡回指導が実施される日程の都合が合わない場合は、巡回指導員の状況により変更ができる場合があります。日程変更を希望される場合は、巡回指導通知に記載されている適正化事業実施機関に電話で相談しましょう。
とはいえ、Gマーク認定審査の一環で実施される巡回指導の場合は、適正化事業実施機関側で巡回指導を終わらせる日程が決まっているため、別日での調整が難しいこともあります。
2.巡回指導時に巡回指導員が確認する書類の期間
巡回指導当日は、巡回指導員が営業所を訪問し、関係帳票類を確認する方法で法令遵守状況を確認していきます。巡回指導員が確認する帳票類は巡回指導通知に明記されています。
大きく分けると次の4つに分類されるでしょうか。
- 許認可申請書の控え、許可書、認可書
- 業務関係の帳票類
- 経理関係の帳票類
- 運輸安全マネジメント関係
巡回指導通知に小さい文字で列記されている書類をご覧になられて動揺される運送事業者様がもいらっしゃいますが、巡回指導通知を受領したときに最初に確認すべきことは、書類の書類ではありません。
確認すべき事項は、巡回指導当日に確認される書類の期間です。
通常、巡回指導日の直近事業年度又は直近月のものを確認されますが、自社の巡回指導では、どの期間の書類を確認されるのかを、巡回指導通知から読み取ってください。
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トラバス代表理事。行政書士開業後、個人事務所時代から一貫して、運輸と観光分野に関する専門家として、数多くのトラック運送会社、貸切バス事業者、倉庫業者の許認可法務に関与してきた経験を持つ。
現在も行政書士法人シグマの代表行政書士として、行政書士法人を経営しながら、運輸業と観光法務の実務家として活動中。
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)賛助会員(認定アドバイザー)