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平成28年11月1日より、貸切バス事業者さん(一般貸切旅客自動車運送事業者)の増車手続きが変更になります。今回の変更では、増車届出の際に管轄運輸支局へ提出する届出書の様式が変更になるだけではなく、変更届出に添付する書類が増えることになります。
変更の背景について
今回の変更のきっかけになったのは、平成28年1月15日に長野県軽井沢町において発生した貸切バスによる痛ましい死傷事故です。
この事故を受けて、国交省では、安全・安心な貸切バスの運行を実現するための総合的な対策を講じることになり、「一般貸切旅客自動車運送事業の事業計画(事業用自動車の数)変更の事前届出について」(平成11年12月13日付け自旅第130号・自環第242号)の一部改正が実施されることになりました。
この法改正により、貸切バス事業者さんが遵守すべき事項を強化する一環として、事業用自動車の数を増加する旨の届出を行った際のチェック項目を追加することになったのです。
新しい事業計画変更届出書の様式
関東運輸局管内に営業所がある貸切バス事業者さんは、増車する際には「事業計画変更届出書」提出することになります。
平成28年11月1日以降に使用する事業計画変更届出書の様式は、関東運輸局や、東京運輸支局・神奈川運輸支局・千葉運輸支局・埼玉運輸支局のホームページにて既に公開されております。
「事業計画変更認可申請書兼届出様式(平成28年11月1日以降)」がそれですので、11月1日以降に営業所を管轄する運輸支局へ増車届出手続きを行う際は、こちらの新様式をご使用ください。
新様式は、一見すると従前の様式と変わらないように見えますが、2枚目の増減車両の明細の欄に「初度登録年月日」を記載する様式に変更されています。
初年度登録年月日の記載を求められるようになったのは、増車する車両が中古車の場合は、事業計画変更届出書に添付する書類が新たに追加になるからです。
中古車を増車する際は、『点検整備記録簿』の提出が必要
今回の法改正により、増車する車両が中古車の場合には、その車両の「点検整備記録簿」の写しの提出が必要になりました。点検記録簿の写しを提出するのですから、法令に則って適切な点検・整備が行われていることが大前提になります。さらに、増車する車両が、リコールが発令された車両の場合は、リコール項目が改善されたことを示す書類もあわせて必要になります。
もし増車予定車両が適切な点検・整備が行われていないと運輸局側が判断した場合、業務改善命令を受けることになります。従って、増車車両が中古車の場合は、これまで以上に点検・整備状況に注意する必要があります。
中古車を新たに購入して増車される際は、前所有者の点検・整備状況がはっきりしない車両は避けた方がよいでしょう。
任意保険又は共済に加入することを証する書面として「宣誓書」は使用できなくなります。
貸切バス事業者さんは、全ての車両において、対人無制限・対物200万円以上の任意保険又は共済に加入する義務があります。今までは、任意保険又は共済に加入を証する書面として、「任意保険へ加入する旨の宣誓書(様式5)」を、保険の契約書申込書や見積書に代えて提出することが認められていました。
しかし、法改正後はこの宣誓書の提出は認められなくなります。宣誓書の代わりに、増車予定車両の保険契約書や見積書が必要になります。運輸支局へはどちらかの写しを提出することになります。
貸切バスの増車手続きの際に必要な書類
関東運輸局管内に営業所を構える貸切バス事業者さんが増車手続きを行う際の必要書類をまとめると次のとおりです。
- 管理運営体制組織図(様式1)
- 運行管理者・整備管理者の資格要件を証する書面
(管理者手帳、資格者証、在職証明書、履歴書、就任承諾書、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)など) - 運転者予定名簿(運転者の免許証(写し)、就任承諾書など)
- 対人無制限・対物200万円以上の任意保険又は共済の契約申込書(写し)、見積書(写し)
- 増車予定車両の点検整備記録簿(写し)※中古車の場合
※上記の書類の他にも、車庫面積に余裕がない場合は、車庫内での車両配置を記載した平面図などの添付書類が求められる場合があります。
平成28年11月1日より、安心・安全な貸切バスの運行の実現のために、増車手続きの際にも、営業所ごとに法令に則った管理者の配置や、使用車両の適切な点検整備状況を確認することになります。増車手続きの際の提出書類は、法令に則した事業運営を行っていれば、どの書類も問題なく提出することができる書類だといえます。も
し、貸切バス事業のコンプライアンスでお困りごとがございましたら、一般社団法人運輸安全総研トラバスまでご相談ください。
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トラバス代表理事。行政書士開業後、個人事務所時代から一貫して、運輸と観光分野に関する専門家として、数多くのトラック運送会社、貸切バス事業者、倉庫業者の許認可法務に関与してきた経験を持つ。
現在も行政書士法人シグマの代表行政書士として、行政書士法人を経営しながら、運輸業と観光法務の実務家として活動中。
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)賛助会員(認定アドバイザー)