本日も『トラバス』のブログへお越し頂きましてありがとうございます。行政書士の阪本です。
さて、7月1日に「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」の一部改正が行われました。今回の改正内容は、次の3点になります。
改正内容
改正点その1
同一事業者内における遠隔地等においても運転者の所属する営業所以外の運行管理者によるIT点呼が実施可能(Gマーク認定を受けている事業者に限る)
改正点その2
酒気帯び状況の測定結果がクラウド型機器でも記録保存可能
改正点その3
Gマーク認定を受けていない営業所でも、一定の要件を満たす場合にIT点呼が実施可能
今回の改正では、まず、IT点呼制度の対象拡大と要件緩和が行われました(改正点その1とその2)。
この改正が実施されたのは、近年、スマートフォンなどの携帯通信機器やクラウド型のデータ保存が普及・高度化しているのを受けたものです。確実な点呼実施を前提としながらも、IT点呼制度について、遠隔地への対象拡大とデータの記録・保存に関する要件緩和が行われました。
また、今回のGマークを取得していない営業所でもIT点呼が実施可能になったのは大きいニュースと言えるでしょう。
そもそも点呼は、営業所において対面で実施することが原則とされています。しかし、都市部では、営業所に隣接した車庫を確保することは難しいため、告示で地域毎に営業所と車庫間の距離の上限が定められており、車庫を営業所に隣接しないで設置することが可能になっています。
営業所と車庫間の直線距離 | 営業所の所在地 |
20㎞ | 東京都(特別区) 川崎市 横浜市 |
10㎞ | 東京都(特別区以外) 神奈川県(横浜市・川崎市以外) 千葉県 埼玉県 |
営業所と車庫が離れている場合は、運行管理者や補助者が車庫の行くか又は、運転者が車庫から一旦営業所に来て点呼を実施することになっています。とはいえ、運行管理者が車庫に行くなどして点呼を実施することは、中小トラック運送事業者さんにとっては大きな負担となっていました。
そこで、今までGマーク認定営業所のみ認められていたIT点呼を、Gマーク認定のない営業所であっても、営業所と車庫間における点呼をIT点呼で行うことが平成28年7月1日よりできるようになったのです。
IT点呼を実施するための要件
Gマーク以外の営業所がIT点呼を実施するための要件は次の4つです。
- 運輸開始後3年を経過している
- 過去3年間、第1当事者となる自動車事故報告規則に掲げる事故を引き起こしていない
- 過去3年間、点呼の実施違反に係る行政処分を受けていない
- 適正化実施機関の直近の巡回指導評価がD、E以外であり、点呼に関する指摘がない又は点呼に係る改善報告書が3か月以内に提出され改善が図られていること
これらの要件すべてを満たす営業所において、IT点呼を実施するためには、国土交通省が定めた機器を導入するとともに、IT点呼を実施する10日前までに、営業所を管轄する運輸支局長宛てに『報告書』を提出する手順を踏む必要があります。
おわりに
Gマーク未取得の営業所においてIT点呼を導入すると、運行管理者や運転手の負担軽減につながりますが、IT点呼を実施しているトラック運送事業者は、安全に、まじめに、事業を行われていることの現れでもあります。
したがって、荷主には安心・安全のアピールにもなりますので、IT点呼導入を一つの目標にされてみてはいかがでしょうか。
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トラバス代表理事。行政書士開業後、個人事務所時代から一貫して、運輸と観光分野に関する専門家として、数多くのトラック運送会社、貸切バス事業者、倉庫業者の許認可法務に関与してきた経験を持つ。
現在も行政書士法人シグマの代表行政書士として、行政書士法人を経営しながら、運輸業と観光法務の実務家として活動中。
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)賛助会員(認定アドバイザー)