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社会保険労務士の志田です。
さて、国土交通省による「監査」と厚生労働省による「監督」において、過労運転等の実態を確認し、重大な違反事実を確認したときは、相互に通報することにより、「監査」・「監督」の手掛かりとする制度があります。
これを相互通報制度というのですが、平成28年8月8日より、この相互通報制度における通報対象となる事案が追加されました。
先般の軽井沢のスキーバス事故を受けて、その対策としてドライバーの労務管理について強化されることになりましたが、今回、追加される事案は「ドライバーの健康診断が実施されているか」。その確認が強化されます。
これにより労働安全衛生法に基づく健康診断を受診させていない企業は、労働基準監督署から運輸局へ通報され、「監査」のきっかけになることになります。
それでは、ここでいう「労働安全衛生法に基づく健康診断」とはどのような内容かを確認しておきましょう。
労働安全衛生法に基づく健康診断
法令によって義務付けられている健康診断は、
- 雇入れ時の健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断(深夜業に従事する者)
の3つです。
定期健康診断は年に1回、深夜業に従事する場合には、半年ごとに1回以上健康診断を行う必要があります。
健康診断の検査項目
健康診断の検査項目は下記のとおりです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 慎重、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査及び喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
ドライバーの健康管理
国土交通省に報告された健康が起因となった事故のうち、脳出血や心筋梗塞などによる事故が約3分の2を占めます。長時間労働が起因するものや、第三者を巻き込んだ事故が起きた場合、当然会社にもその責任が問われることになります。
そのようなことにならないためにも、定期的な健康診断の受診は必ず行い、脳血管疾患、心臓疾患に関連する一定の項目に異常の所見があったドライバーには、必ず二次健康診断を受けさせましょう。
二次健康診断では、医師から乗務の可否、乗務の際の配慮事項などについて意見を聞いておくと良いでしょう。
また、てんかん発作が原因となった死亡交通事故のケースからも考えると、定期健康診断だけでなく、併せて「ドライバーの持病についての確認」も実施しておくことをオススメします。
例えば採用時の提出書類として「病歴申告書」を加えておくのも、予防のひとつです。
ほかにも、運行管理者は「点呼時にドライバーの疾病などによる安全運転への影響などについて確認すること」とされています。
乗務前点呼においてドライバーの体調確認も怠ることなく実施しましょう。これも毎日行うことができる健康管理のひとつです。
このように採用時の健康チェック、毎日の体調確認(点呼時)、年に1回の健康診断というように、自社のドライバーの健康管理体制を整えておくことが重要です。
終わりに
今回の追加事案は、「ドライバーの健康診断実施の確認」となりますが、健康診断の実施だけでなく、これを機に自社の「健康管理体制」についても、見直してみてはいかがでしょうか?
「健康管理体制」についてご不明・ご不安な点があれば、お気軽にご相談ください。
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トラバス理事。都内大手社会保険労務士法人で企業の労務相談、就業規則・各種規定の作成、指導、実務書の監修、労働保険・社会保険手続き、給与計算業務に携わる。その後、独立開業。
現在は、特に中小企業のための「リスクヘッジ型就業規則」コンサルティングと「社内のルール作り」「長時間労働対策」に力を入れている。また「企業はヒト」、「人材の定着には組織風土の活性化は欠かせない」という考えからユニークな企業内研修も実施。併せて民間企業、役所、商工会議所、法人会において労務管理セミナーの講師も務めている。