路上駐車して仮眠・・・過労状態で免停処分。

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弁護士の橋本です。

過労運転防止への取り組みの必要性 ~摘発強化と重罰化傾向~

現在、運輸当局が運送会社に一番求めていることは適正な労働時間の管理であり、いわゆる「過労運転の防止」です。

以下の2つの事例を発端として、取り締まりが厳しくなっていますが、摘発される運転者、業者はあとを絶ちません。

  • 高速道路上の路側帯に駐車して仮眠をしていたドライバーの供述を発端に道路交通法違反(過労運転などの下命・容認)で運送会社代表者が逮捕されたもの。
  • 路上駐車をして仮眠をとっていたドライバーが警察官に職務質問された際に、ドライバーの過労状態が判明、道路交通法違反(過労運転等の禁止)でドライバーは免許停止180日と刑事処分50万円以下の罰金の処分を受けたもの。

「過労運転=居眠り運転による事故」という認識が一般的で、事故を起こさなければ摘発されないと思われがちです。しかし、上記の事例のように、事故を伴わない場合でも、犯罪であり、立件されています。

さらに、過労運転が原因とみられる事故が後を絶たないため、警察は違法駐停車中の仮眠での摘発を強化しています。

通常駐停車しないような道路で駐停車をして、そこで仮眠をしているなどという状況はドライバーが疲弊していることを示すものである可能性が高いので、警察は積極的に職務質問などを行っているものと考えられます。

過労運転が原因で事故を起こした場合には、さらに重罰化傾向にあります。

平成28年に東広島市山陽自動車道のトンネル内で、死者2名及び多数の負傷者を出した多重事故の原因となった車両のドライバーは、自動車運転処罰法違反のほか道路交通法違反(過労運転の禁止)で逮捕され、懲役4年の実刑判決を言い渡されました。

また、このとき、極度の過労で正常な運転ができない状態にあると知りながら運転を指示していたとして、運行管理者も逮捕、起訴されています。

過労運転の罰則

過労運転は、以下の表のように道路交通法により禁止されており、事故を起こしていなくても、過労状態が判明した場合にはそれ自体が処罰の対象であり、厳しい処分が下される可能性があります。

ドライバー本人

  • 処罰の対象になる
  • 道路交通法第66条(過労運転等の禁止)
  • 罰則:3年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条2の2第7号)
  • 違反点数:25点

なお、上記違反点数の場合には、運転免許は即取消となります。

【道路交通法第66条 (過労運転等の禁止)】

何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならないほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。

会社・運行管理者

  • 処罰の対象になる
  • 道路交通法第75条4項(過労運転の下命・容認)
  • 罰則:3年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条2の2第10号)

【道路交通法第75条4項 (自動車の使用者の義務等)】

自動車の使用者(安全運転管理者等その他自動車の運行を直接管理する地位にある者を含む。)は、その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、第66条の規定に違反して自動車を運転することを命じ、又は自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認してはならない。

おわりに

会社が過労状態をドライバーに強いていた場合は、会社には車両使用制限命令や営業停止処分等の厳しい処分が科される場合もあり、会社のイメージダウン、取引先からの信用の失墜、会社存続の危機に繋がってしまいます。

さらに、過労運転を単に容認していたとみなされた場合であっても同様に刑事罰の対象となる点に注意が必要です。

過労運転を防止するには、ドライバーの労働時間を減らすことが必要ですが、簡単なことではありません。しかし、労働時間を超過することは許されません。

御社だけの問題ではなく、運送業界全体の問題でもありますので、荷主や協力会社等とコミュニケーションを図りながら改善していくことも大切だと思います。

このようなご相談も『トラバス』では承っておりますので、お気軽にお問合せ下さい。

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