トラック事業者の固定(定額)残業手当:後編

本日も『トラバス』のブログへお越し頂きましてありがとうございます。 社会保険労務士の志田です。

トラック事業者の固定(定額)残業手当:前編』では、会社側が敗訴した判例をもとに固定残業手当が認められるためのポイントを説明しましたが、今回は、会社側が全面勝訴した判例をもとに、固定残業代が有効とされるポイントを確認したいと思います。

富士運輸事件判決

トラック運転手が運送会社に未払い残業代を請求したが、その請求を認めずに会社側が全面勝訴した事件です。

富士運輸での賃金体系は、基本給のほか、多くの手当が支給されており、そのなかの運行コースにより定額が支給される「各種割増手当」と「加算手当」の合計額については、割増賃金を含めたものとし、実際に割増賃金として計算した額以上を支給するものと賃金規程に定めていました。

会社が勝訴したのは、各種割増手当の金額を、賃金体系説明書に定めていたことなど、制度がきちんと整備されていたことと、それだけではなく、従業員の労働時間をきちんと管理し、その「労働時間で算出した割増賃金」と「各種割増手当」とを比較した賃金計算表を作って従業員に配布していたことだと考えられます。

このような会社の取組も、評価されたのではないでしょうか?

固定残業代が認められるためのポイント

この事件から見て固定残業代が認められるポイントは以下のような点です。

まずは制度の整備で、具体的には、

  • 通常の賃金と割増賃の部分を区別し、割増賃金については、何時間分の残業代が含まれているかを明確にすること
  • 固定残業手当に含む残業分については、賃金規程や賃金表へ記載しルールを明文化しておくこと

などが挙げられます。

もうひとつは労働時間の管理です。

この2つはやはり必須であることがわかります。

特にドライバーの手当に「何時間分の残業代が含まれているか」の基準を作るには、運行方面別の走行距離、走行時間、積卸の時間等によりあらかじめ算出しておく必要があります。

賃金設計にご不安な点がありましたらお気軽にご連絡ください。

blog_banner_mail blog_banner