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相次ぐバスの事故
平成28年1月は、運転者の健康状態に起因すると思われる事故が相次いで発生しております。関東運輸局はバス事業者に対して、事故防止対策を徹底するよう文章で注意を促しています。
平成28年1月26日
バス事業者 各位
バス運転者の健康起因事故防止の徹底について
運転者の健康状態に起因する事故の防止については、従来から機会あるごとに指導してきたところでありますが、今月に入り、運転者の健康状態に起因すると思われる事故が相次いで発生しました。
①東京都小金井市における乗合バス事故(1月7日)
②兵庫県淡路市の神戸淡路鳴門道における貸切バス事故(1月17日)
③宮城県仙台市における乗合バス事故(1月22日)
幸い、乗客や歩行者に死傷者は生じなかったものの、一つ間違えれば大事故になりかねない状況が生じたところであり、安全の確保が全てに優先されるべき公共交通機関において、このような事態が生じたことは誠に遺憾であります。
このため、改めて下記の内容をはじめとした「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」等の運転者の体調急変に伴う事故を防止するための対策の再徹底をお願いします。
記
1.定期健康診断による疾病の把握
定期健康診断において、要再検査や要精密検査、要治療の所見がある場合には、当該運転者に医師の診断または治療させ、その結果(医師からの乗務に係る意見)を把握すること。
2.就業上の措置の決定
上記1における医師からの意見等を勘案し、当該運転者における就業上の措置(業務負担の軽減、業務転換、乗務の継続/中止等の措置)を講じること。乗務の軽減や転換などの措置を行った場合には、当該運転者に対して、医師等による改善指導又は保健指導を受けさせ、健康状態を継続的に把握すること。
3.乗務前点呼における乗務判断
乗務前の点呼において、事業用自動車の運転者の健康管理マニュアルに定められている判断目安に基づき、運転者が安全に乗務できる健康状態かどうかを判断し、乗務の可否を決定すること。
4.乗務中の判断・対処
乗務中に、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある一定の病気等に係る前兆や自覚症状等が現れた場合には、運転者は無理に運転を継続せずに、近くの駐車場やサービスエリア・パーキングエリア等にて休憩を取り、速やかに運行管理者等に報告するよう指導すること。
また、実際に体調が悪化した場合、または、急を要する脳・心臓疾患の前兆や自覚症状が現れた場合には、即座に運転を中止し、車両を安全な場所に停車させるなどして安全を確保し、速やかに運行管理者等に報告するよう指導すること。
5.平時からの健康増進
上記4点のほか、運転者の疾病の発症や健康状態の悪化につながる過労等をできるだけ引き起こさないためには、産業医やヘルスケア機器、各種スクリーニング検査等を活用した健康状態の確認と、働く人それぞれの状況に応じたきめ細やかな労務管理に努められたい。
また、運転者が自主的に疾病・過労を申告し、安心して治療し現場復帰できるような社内環境・雇用環境の整備に努められたい。
以上
この注意喚起はバス事業者向けに出されましたが、トラック運送事業者も無視できない内容です。トラック・バスなどの自動車運送事業は、多くの利用者の生命・財産を安全に目的地まで運ぶ重要な機能を担っているからです。
運転者の健康状態を把握する義務
昨今、問題になっているのは、運転者の健康状態を適切に把握していない運送事業者による事故です。
運送事業者は、運転者に対して入社時及び定期の健康診断を実施することが義務付けられています。そして、この健康診断の結果を踏まえて運転者の健康状態を把握する必要もあります。
健康診断は、1年以内ごとに1回、定期的に行わなければなりません。また、深夜業に従事する運転者に対しては、6か月以内毎に1回以上定められた健康診断を実施しなければなりません。
運送事業者は、運転者の健康診断の結果に異常の所見が見られた場合は、医師から乗務に係る意見(乗務の可否、乗務の際の配慮事項など)を聴取し、聴取した健康診断の個人票の「医師の意見」欄に記入を求める必要があります。
健康診断の結果に、「要再検査」や「要精密検査」、「要治療」の所見がある場合には、医師による診断や面接指導を運転者に受診させ、医師の判断により必要に応じて、所見に応じた検査を受診させる必要があります。
さらに、運送事業者は、これらの結果を把握するとともに、医師から今後の運転者の乗務(乗務の可否、乗務の際の配慮事項など)を確認する必要があります。
運転者の健康診断結果に、「要注意」や「要観察」の所見がある場合は、運送事業者は、運転者の日常生活に注意し、次回の健康診断までに様子を見るとともに、必要に応じて、医師の意見を聞きながら、生活習慣の改善に努める必要があります。
運転者の健康状態把握の重要性
運転者の健康状態を的確に把握することはコストがかかることです。
しかし、安全の確保が全てに優先されるべき運送事業においては、事故防止に務めるのは運送事業者の社会的責任です。もし、運転者の健康状態を原因にした大事故が起きると、会社の看板に大きな傷がついてしまいます。
そうなる前に、法令に則った運行ができているかを確認しませんか?
自社で確認できない場合は、お近くの運送業専門の行政書士に相談されることをご提案いたします。
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トラバス代表理事。行政書士開業後、個人事務所時代から一貫して、運輸と観光分野に関する専門家として、数多くのトラック運送会社、貸切バス事業者、倉庫業者の許認可法務に関与してきた経験を持つ。
現在も行政書士法人シグマの代表行政書士として、行政書士法人を経営しながら、運輸業と観光法務の実務家として活動中。
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)賛助会員(認定アドバイザー)