本日も『トラバス』のブログにお越し頂きましてありがとうございます。 行政書士の阪本です。
さて、平成28年1月に長野県軽井沢町で起きたスキーバス事故を受け、政府は、規制強化貸切バス事業許可を原則5年の更新制に改める他、悪質な事業者への罰金を大幅に引き上げる道路運送法の改正案が平成28年9月26日召集の臨時国会に提出する見込みです。
軽井沢バス事故では、運行前点呼を実施していなかったり、運行指示書に不備があったりと複数の法令違反が発覚しました。その後、国土交通省は、貸切バス事業者に対して街頭で緊急監査を実施し、その結果、運行指示書の不備などの法令違反が実施した242台のうちの86台(35.5%)の車両で確認されました。
貸切バス事業者さんは、運行指示書を作成して、運転手さんに携行させなければならないのですが、それが法令通り実施できていない事業者さんが散見されます。
そこで、このページでは、貸切バス事業者さんが作成しなければならない運行指示書について掘り下げていきたいと思います。
貸切バス事業者さんは日帰り・1泊2日の運行であっても、運行指示書を作成する必要あり
貸切バス事業専業の事業者さんでしたら勘違いはないと思いますが、貨物自動車運送事業も経営されている事業者さんはココは気を付けなればならない点です。貨物自動車運送事業では、運行指示書の作成対象となる運行は、48時間を超える中間点呼を必要とする乗務です。つまり2泊3日以上の運行をする場合は、運行指示書を作成して、運転者はそれを携行する必要があります。一方、一般貸切旅客自動車運送事業の場合は、48時間以内の運行、つまり日帰りや1泊2日の運行であっても、運行指示書を作成して、運転者はそれを携行する必要が生じます。
運行指示書の記載事項は旅客自動車運送事業運輸規則第28条の2で決まっています
運行指示書の作成方法は、ワードやエクセルなどパソコンを使用して作成しても構いませんし、手書きでも構いません。作り方は事業者さんの自由ですが、運行指示書に記載しなければならない事項は法律で決まっております。運行指示書に記載しなければならない事項は、次の10項目です。
- 運行の開始及び終了の地点及び日時
- 乗務員の氏名
- 運行の経路並びに主な経由地における発車及び到着の日時
- 旅客が乗車する区間
- 運行に際して注意を要する箇所の位置
- 乗務員の休憩地点及び休憩時間(休憩がある場合に限る。)
- 乗務員の運転又は業務の交替の地点(運転又は業務の交替がある場合に限る。)
- 第二十一条第三項の睡眠に必要な施設の名称及び位置
- 運送契約の相手方の氏名又は名称
- その他運行の安全を確保するために必要な事項
10番目の「その他運行の安全を確保するために必要な事項」は、雨天時の運行が予想される場合は「降雨時は速度を落として走行すること」といった、運行管理者から運転者に対しての安全運転のための指示になります。
運行指示書は、運行終了日から1年間保存しなければならない
運行指示書は、その運行が完了してもすぐに処分することはできません。一般貸切旅客自動車運送事業者は、運行指示書を、運行が終了した日から1年間は保管しなければなりません。この1年間という保管期間も、運行指示書の記載事項と同様に法令で定められている事項です。
従って、運行終了後1年間保管することを考えると、運行指示書はA4用紙のサイズで作成して、厚めのファイルに綴じ込むのが良いかもしれません。
運行指示書作成システムの活用
とはいえ、運行管理者さんは日々運転者さんの点呼を行ったり、運転者さんが出発後は適宜、運行の指示を出したりと、なにかとお忙しいと思います。
ミスなく法令に則した運送指示書を作成することは難しいのではないでしょうか。そういう時は、運行指示書の作成システムを活用してみてはいかがでしょうか。
運行指示書作成システムといっても様々な製品が出ておりますが、運行指示書作成に特化したシステムとして、株式会社データプラス社製「指示らくネットforバス」というシステムがあります。
この運行指示書作成システムは、グーグルマップ上で運行指示書を作成するシステムで、東京ビッグサイトで開催された展示会で実際に使ってみましたが、カーナビ感覚で法令に則した運行指示書が作成することができました。
ご紹介した「指示らくネット」の他にも運行指示書を作成するシステムが販売されておりますので、貸切バス事業者さんには、ITを上手に活用して頂き、運行管理者さんの業務負担を減らしながら、法令に遵守した運行を行って頂ければと思います。
許認可申請手続きが限らず、ITを活用した運行指示書作成方法についても、お困りな点がございましたら、まずは私どもにご相談ください。
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トラバス代表理事。行政書士開業後、個人事務所時代から一貫して、運輸と観光分野に関する専門家として、数多くのトラック運送会社、貸切バス事業者、倉庫業者の許認可法務に関与してきた経験を持つ。
現在も行政書士法人シグマの代表行政書士として、行政書士法人を経営しながら、運輸業と観光法務の実務家として活動中。
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)賛助会員(認定アドバイザー)