本日もブログにお越し頂きましてありがとうございます。行政書士の阪本です。
さて、トラック運送事業者の役員(代表取締役、取締役、監査役)に変更が生じた場合、役員変更手続きを行わなければなりませんが、どこの行政機関に、どのような書類を提出する必要があるのでしょうか。
今回はその役員変更手続きについて解説していきたいと思います。
トラック運送事業者の役員変更
役員に変更が生じた場合、まず、はじめに行わなければならないのが、登記簿謄本の書換え手続きになります。
この手続きは、運送事業者の本店所在地を管轄する法務局に、役員変更登記申請書を提出することで行うことになります。
登記に必要となる書類
役員変更登記手続きは、司法書士の専門分野となりますので、詳しい手続きは法務局やお付き合いのある司法書士さんにご確認頂きたいと思いますが、役員変更登記手続きに必要となる書類は、次のような書類になります。
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
- 取締役の互選書
- 就任承諾書
- 辞任届
- 役員の印鑑証明書
- 定款 など
これらの書類がすべて必要になるのではなく、運送事業者様の機関設計や変更となる役員の役職によって、法務局へ提出書類が異なってきます。
運輸局への届出
また、トラック運送事業者は法務局への役員変更登記手続きとあわせて、運輸局への役員変更届出も忘れずに行いましょう。
役員変更届出の提出先は、主たる営業所の所在地を管轄する運輸支局になります。
提出書類は、変更届出書と宣誓書の2つです。
変更届出書には、新旧対照表に変更が生じた役員の役職名と氏名を記入します。
新たに役員が就任した場合は、その役員が貨物自動車運送事業第5条に掲げられている欠格事由に該当しない旨の宣誓書を提出します。
提出する書類はこの2種類だけのため書類作成自体は簡単ではありますが、注意すべき点が2つあります。
注意点1:新任役員の欠格事由
トラック運送事業者の役員には、誰でも就任できるわけではありません。貨物自動車運送事業法第5条に掲げられている欠格事由のいずれにも該当しない方でしか、役員に就任することはできません。
(欠格事由)第五条 次の各号のいずれかに該当する者は、第三条の許可を受けることができない。
一 一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者二 一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から二年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日(行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第十五条第一項 の通知が到達した日(同条第三項 により通知が到達したものとみなされた日を含む。)をいう。)前六十日以内にその法人の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。第四号において同じ。)であった者で当該取消しの日から二年を経過しないものを含む。)
三 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人であって、その法定代理人が前二号又は次号のいずれかに該当するもの
四 法人であって、その役員のうちに前三号のいずれかに該当する者のあるもの
貨物自動車運送事業法第5条には、「許可を受けることができない」と記載されておりますが、この欠格事由に関する条文は、許可取得後のトラック運送事業者にも適用されます。
従って、役員変更手続きを進める前に、新たに就任される役員(代表取締役、取締役、監査役)が貨物自動車運送事業法の欠格事由のいずれにも該当していないことは確認する必要があるでしょう。
注意点2:代表取締役の変更届出は「遅滞なく」提出を
トラック運送事業者の役員変更届出を提出する時期は、代表権を有する役員の場合と代表権を有しない役員とでは、取扱いが異なっています。
代表権を有する役員(代表取締役)の変更手続きは、役員変更が生じてから遅滞なくその届出手続きを行わなければなりません。
代表権を有しない役員(平取締役や監査役)の変更手続きは、前年7月1日から6月30日までの期間に生じた役員変更手続きは、毎年7月31日までに行わなければならないとされています。
つまり、代表権を有しない役員変更手続きは、まとめて行うことができるようになっています。
終わりに
トラック運送事業者さんの役員変更手続きは、簡単な手続きではありますが、法務局と運輸支局の2か所のでの手続きが必要となるため、手間と面倒がかかります。
トラック運送事業者自身で行うこともできますが、専門家に依頼することにより、事務手続きの負担を減らして、営業活動や運行管理に集中することを検討されてみてはいかがでしょうか。
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トラバス代表理事。行政書士開業後、個人事務所時代から一貫して、運輸と観光分野に関する専門家として、数多くのトラック運送会社、貸切バス事業者、倉庫業者の許認可法務に関与してきた経験を持つ。
現在も行政書士法人シグマの代表行政書士として、行政書士法人を経営しながら、運輸業と観光法務の実務家として活動中。
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)賛助会員(認定アドバイザー)