運行管理者試験対策(貨物編)

1 はじめに

弁護士の橋本です。

この度、運行管理者試験(貨物)を初受験し合格することができました。得点は30点中28点でした。

今後、皆様が受験される際にヒントとなると思われることを記載しておきますので、学習の参考にして頂けますと幸甚です。

今回は、総論的に、どのような試験なのか、どのような対策をすればよいのかをご紹介することにして、次回から、各論として分野別・問題類型別の傾向と対策の解説に入っていきたいと思います。

2 試験の特徴

(1) 基本的には暗記の試験

受験対策をした実感として、じつに9割以上が暗記の試験と言ってよいと思います。

もちろん例外もあります。たとえば、事故防止の方策として有効な手法を選択肢の中から選ぶ問題などは、暗記では対処できない問題の一つですが、全体の中では少数派です。

内容を明確に暗記していない問題が出たときも、場合によってはある程度常識で解けるのですが、やはり暗記していなければ自信をもって回答ができず、万全の対策とはいえません。

計算問題などもありますが、(計算の理屈自体は理解することが必要としても、)公式を覚えていなければならず、これは結局のところ暗記に近いものがあります。

暗記の内容としては、とりわけ、「1日の乗務時間は何時間まで?」とか、「車幅は何メートルまで?」といった数字の暗記を要求される場面も多く、これが合否に直結します。

したがって、重要な数字は、語呂合わせを使ってでも覚えなければなりません。

たとえば車高「3.8メートル」までという規制について、あえて0.1メートル数字を変えて「3.9メートル」や「3.7メートル」として間違った選択肢としてきたりして実際に出題されているので、これらは割り切って暗記するしかありません。

こうした問題を見る限り、ざっくりこのくらいという覚え方では対処できないわけです。

逆に、それさえできていればかなりの数の選択肢を瞬殺することができ、得点源となっていきます。

後述のように過去問が繰り返し出題されていますので、暗記するポイントも過去問を検討することによって特定していくことができます。

ただ、数字は重要なので、できれば出てくる数字はすべて暗記するつもりで学習したほうが良いと思います。

私は、数字が出てくる部分については、出てくるたびにすべて抜き書きしておき、集約したものを縮小コピーして持ち歩いて、移動中などに確認していました。

(2) 過去問の重要性

過去問と全く同じ選択肢が繰り返し出題されています。全く同じでなくとも、文章を裏返しにした選択肢にして、正解肢を誤りの肢に変えたりしながら問われています。

年度によって難易度に変化があると見受けられますが、最低でも過去3回分を模試のような感覚で時間を計って解いておく必要があると思われます。

なお、古い問題を練習する際には法改正に注意することが重要です。

古い問題を検討するときは、その頃の本を使うのではなく、古い問題が載っていてもテキスト自体は毎年改訂がされているものを使えば安心でしょう。

それに加えて、普段学習に使用するテキストを選ぶ際に、過去問の選択肢が各項目ごとに引用されて紹介されているものをお勧めします。

そのようなテキストを使用することによって、現在学習している分野が、実際の試験ではどのような形で問われているか、誤りの選択肢となる場合にはどのようなひっかけの仕方をされているかなどの相場を概観することができます。

漫然とすべての知識を頭に入れることは大変ですし非効率です。完璧主義にならず、過去問での問われ方を一つの基準にして、その限りの知識を繰り返し覚えていくのが良いと思います。

(3) 6割取れば合格

本試験は、6割正解すれば合格できます。前述したとおり、完璧主義にならないでください。

今回、あくまで結果として2問ミスにとどめることができましたが、これは正直に言って、目標値を大きく上回るものでした。

まして、満点など狙って勉強をしてはおりません。目標はあくまで7割~8割(21問~24問)くらいのところで設定しておりました。

とくに、私もそうでしたが、この試験は仕事をしながら受験される方が多いと思いますので、効率よく学習する必要があります。満点を狙っていくことは全くお勧めできません。

ざっくりと全体を7割~8割の完成度に仕上げることが重要だと覚えておいてください。

とくに、最初にテキストを読むときは、7割がた頭に入ったと思ったらすぐに次の分野に行きましょう。全体を終わらせてから少しずつ精度を上げていくのが得策です。その意味で復習のウエイトが高いといってもよいでしょう。

なお、全体で6割の基準のほかに、分野ごとに最低正解数(実務知識問が2問、その他の分野は1問)があることからも、まんべんなく学習し、全体の精度を徐々に上げていく学習方法をお勧めする次第です。

(4) 合格率35%の試験

今回、受験者数に占める合格者数の比率は35%と、例年に比べて高かったようです。前回が20%と聞いていただけに、私としてはかなり身構えて勉強しましたが、このように、合格率に比較的大きな変動があるようです。

ただ、それでも35%というのは3人に1人程度しか合格しないわけですから、油断はできません。むしろ約3倍というのはそれなりに倍率の高い試験といってよいのではないかと思います。また、いつまた20%台に下落しないとも限りません。

しかし、私が、受験資格を得られる基礎講習(私は7月7日~9日の3日間で受講しました)の際の、周囲の参加者の学習状況からすると、実質的な倍率はもっと低いという感覚です。

すなわち、基礎講習修了から2か月弱ほどの間、しっかり学習してから受験している方がどのくらいいらっしゃるのか、きわめて疑問に思われます。ある程度真面目に対策している方の合格率はもっと高いのではないかと思われます。

基礎講習は、運行管理者試験の受験資格を得るためのものとしては、試験対策に関係のある内容も扱いますが、運行管理者の補助者資格を得るためのものでもあります。

このように、試験対策に特化したものではないので、基礎講習の内容だけでは合格できません。

そもそも、前述のとおり6割取れれば合格するのですから、合格人数や合格率が先に決まっている選抜試験ではありません。本来は全員が合格できる試験なのです。

(5) 法令の試験

ほぼすべての問題が、法令ないし通達や指針といったものの条文そのものから出題されています。法令の解釈である判例や学説といったものが出題された例は皆無です。

通達や指針は、法令の解釈や基準を行政庁が示すものですから、そこでは解釈論の余地はほとんどなく、いわば一義的に内容が決まっています。

それでも、通常の文書と異なりますから、法令を読むことに慣れていない方は、ある程度読み込んで慣れる必要があります。

一例を挙げますと、おそらく過去問集やテキストを開くと、貨物自動車運送事業法の第1条(目的規定)が虫食いになって出題されているのを最初に見ることになると思います。ここでは、用語を正確に覚えておかないと対処できません。

例題

 この法律は、貨物自動車運送事業の運営を(A)なものとするとともに、貨物自動車運送に関するこの法律及びこの法律に基づく措置の遵守等を図るための(B)による自主的な活動を促進することにより、(C)を確保するとともに、貨物自動車運送事業の(D)を図り、 もって(E)の増進に資することを目的とする。


正解(A)適正かつ合理的(B)民間団体等(C)輸送の安全(D)健全な発達(E)公共の福祉

これらの用語を、たとえば「適正かつ合理的」という文言が正解のところを、たとえば「適法かつ円滑」などと一見違和感のない文言に変えて出題してくるわけです。

あるいは、第2条には定義規定があり、「貨物自動車運送事業とは?」、「一般貨物自動車運送事業とは?」といった設問が頻出となっています。

これらも、定義の暗記・理解が必要となってきます。条文に書いてありますので、そのまま出題されます。逆に言えば、受験者としては、そのまま覚えておけば対処できるわけです。

テキストではこれらの条文の内容を簡易な言葉で説明してくれていますが、いずれは条文の原文を読めるようになっておくと、結局のところ復習の場面では早道かもしれません。

3  小括

以上、試験の特性について概観いたしました。決して容易な試験とはいえませんが、正しく対策すれば誰でもいずれは合格することが可能と考えております。

次回以降、分野別に問題の傾向と対策を述べていきたいと思います。最後までお読み頂きありがとうございました。

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