ホワイト経営認証における就業規則の認証項目の内容
就業規則が制定され、労働基準監督署長に提出されている。また、従業員に周知されている。
この項目を読む限り、就業規則をインターネットや他社の流用などで用意して、労基署へ提出し、従業員にそれを知らせればよい。というようにも読み取れます。
実際、ホワイト経営認証に合わせて、急遽、あるいは暫定的に自社内で就業規則を用意する場合は、およそ以下のパターンが考えられます。
- インターネット上で就業規則を探し、少しアレンジして使う。
- 5年以上前の就業規則だが、とりあえず今あるのものを利用する。
- 書店で就業規則の専門書を購入し、総務担当者に作成させる。
以上の3つの方法は、あまりお勧めできません。
では、その理由を順にご説明いたしましょう。
就業規則作成の際に陥りやすいミス
インターネット上の就業規則を少しアレンジして使う
これが明らかに良くないことは、誰にでも分かります。
しかし、駄目だとは思っていても、具体的にどこが良くないかが分かる方は少数派でしょう。
就業規則は、労働基準法上の基準を満たす必要がありますが、この法律、実はざっくりとした法律で、そのままではルールとして、決定的に足りないのです。
例えば、「休日」です。
労働基準法でいう休日とは、週に一度の休日を指します。これを「法定休日」と呼びます。
労働基準法では、この法定休日に出勤すると、休日出勤手当として135%の割増賃金を支払わなければなりません。
しかし、通常、土日祝日が世間でいうところの休日です。
つまり、法定休日はいつなのかを明記しておかなければ、どこで、休日出勤手当を支払うのか、あるいは、全ての土日祝日に休日出勤手当を支払うのかがハッキリしません。
従業員は当然に全ての休日に手当が支払われると思うことでしょうし、そのように書いてあれば、それに従うしかありません。ここだけで、相当のズレが起きることがお分かりかと思います。
5年以上前の就業規則だが、とりあえず今あるものを利用する
こちらも、何となく良くないことは伝わります。法律が変わるものであることを皆さんが知っているからですね。
働き方改革で、大きな法改正があり、その中のひとつに年次有給休暇の5日付与が会社の義務となりました。これによって起こりうる問題への対策として、年次有給休暇の会社側の指定権を就業規則に定める必要があります。
年次有給休暇は従業員側の権利です。いつ使おうと、基本的には自由なのです。しかしそれでは、会社の義務が果たせないために、就業規則で準備する必要があるのです。
また、別の法律では有期雇用も5年という事実上の上限ができてしまいました。
これによって、従業員側が会社の意思とは関係なく、有期雇用から無期雇用へ切り替えることができるようになりました。
就業規則で無期転換された有期雇用従業員の転換後の条件や定年を決めておかなければ、正社員になったとの誤解を与えたり、定年が事実上消滅してしまったりするのです。
書店で就業規則の専門書を購入し、総務担当者に作成させる。
一見、リーズナブルで、合理的のようにも見えます。
しかし、専門書の読み込みは、かなりの基礎知識が必要であり、相当の時間を要します。総務担当者も暇ではありません。
また、総務担当者は従業員の立場として作成するわけですから、会社が運用しやすい就業規則というよりは、従業員にとって条件の良い規則を作り上げてしまう可能性も多分にあります。
しかも、総務担当者に就業規則作成を丸投げしている場合、経営陣は、その具体的内容までは分かりません。何が起きているかに気付くのは、実際に問題が起きたときです。しかし、それでは取り返しがつかないことも多々ございます。
ホワイト経営認証の機会にしっかりとした就業規則作成を
さて、上記のような条件で作成された就業規則ですが、何が怖いかと申しますと、就業規則で定めたことは、それを守る義務が会社にあるということです。
就業規則の条件の中で、労働基準法に満たない部分は、無効とされ、労働基準法を上回る部分については、就業規則が有効であり、労働基準法のレベルに落とすことはできません。
更に悪いことに、労働条件は、原則として従業員にとって不利益な条件への変更が禁止されています。
このことから、就業規則は一度作成して周知させてしまうと、簡単に変更することはできないのです。
そう、上記3つの背景で作成された就業規則に半永久的に縛られることになります。
ホワイト経営認証のため、いかに早急に就業規則が必要だとしても、とりあえずという就業規則が、どのような結果を招くことになるかがお分かりいただけたでしょうか。
この人材不足の時代、ホワイト経営認証は、企業イメージを公的な証明によってアピールできる極めて需要なファクターとなり得ます。
それゆえ、事業主様は企業イメージに釣り合う、しっかりとした就業規則作成をご検討ください。
トラバスには、ホワイト経営認証のための人事労務管理周りの整備のみならず、全ての認証項目において、運送業者様を支援する準備がございます。
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警視庁巡査を拝命してから警視庁警部補を依願退職在職までの約17年間の内、約10年を本部刑事(捜査第三課)、約5年を所轄署刑事として従事。
この間、空き巣や金庫破りなどの建物に侵入して敢行するいわゆるプロの泥棒を数十人検挙。
警部補で警視庁本部に所属した際は、自ら捜査本部を陣頭指揮し、窃盗犯の割り出しから行動確認、証拠収集、令状請求、逮捕、取調べにあたり、侵入窃盗犯罪に精通するに至る。
現在は、社労士業務、行政書士業務のほか、併設法人合同会社Place C Nineの代表として防犯コンサルティングを実施。
危機管理を含んだ総合的支援をモットーとしており、即時、ベストな提案と対応ができる頼れる専門家として活動している。